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#63 一つのメルヘン
小樽堺町のメルヘン交差点には多くの人が日々訪れています。
時を告げる大きなからくり時計や、少し音痴な蒸気時計が旅行者を迎えてくれています。
瞼を閉じて、ゆっくりと開けば、異国を訪れた旅人にさせてくれる、それが堺町メルヘン交差点。
旅行者はお土産を鞄に、想い出を胸のポケットに詰め込んで旅を続ける。
リュックを背負い旅をしていた頃、長い山道を歩いていると、一人のおばあさんが庭先から道に顔を出し、僕の前に立ち、一つの木の枝を差し出してきた。その枝には幾つものビワの実がついており、おそらく庭から坂道を歩いてくる僕の姿が見え、急いで枝を折って僕の為に持ってきてくれたのだろう。「ありがとう、ありがとう」と、僕が何度かお礼を言うと、無言のまま待っていろと手で制して庭の方に戻っていった。そして、戻って来たおばあさんの手には、ビワの実をたわわに付けた枝がもう一つ握られていた。
今はもう、おばあさんの顔も、それが九州のどこだったのかすらも覚えていない。ただその出来事だけが深い感動として色褪せる事もなく残り続けているのです。
そう、それは、一つのメルヘンだったのです。
小樽を旅した旅行者は胸のポケットにどんな想い出を詰め込みこの街を後にするのか。
それを彩る片隅にトマホークスの役割があると思っています。